タイ自動車業界、国内部品90%のピックアップ販売支援を政府に要請。輸入EV急増に危機感。

タイ工業連盟(FTI)は、低迷が続くピックアップトラックの販売を下支えするため、政府に購入促進策を講じるよう求めている。
ピックアップは部品の約90%を国内で調達しており、販売・生産の減少が部品メーカーや雇用など幅広いサプライチェーンに波及しているためだ。

一方、電気自動車(EV)の販売は急拡大しているものの、1~7月に販売された電気乗用車の62.58%を輸入車が占めたとして、国内生産車との競争条件をめぐる懸念も強まっている。

FTI自動車産業部会のスラポン会長顧問兼スポークスマンが8月25日、明らかにした。

2026年1~7月のタイ国内の自動車販売は40万6,162台と前年同期比15.39%増えた。
このうち電気乗用車は、12万5,411台と97.39%増加した。

ただ国内で生産された電気乗用車は4万6,924台で、販売台数の37.42%にとどまった。
残る62.58%は、輸入EVが占めた計算となる。

スラポン氏は、タイ国内で生産される内燃機関(ICE)車やEVは、国内で雇用を生み、タイ製部品を使用して経済に貢献していると指摘する。
輸入EVとの競争条件が公平になるよう、政府に自動車関連税制の見直しを求めた。

◆ピックアップ販売、ピーク時から6割超減

FTIが特に懸念しているのが、タイの基幹産業の一つであるピックアップトラック市場の低迷だ。

かつて月3万台を超えていた販売は足元で1万台余りまで落ち込み、60%以上減少した。
国内経済の低成長を背景に金融機関が自動車ローンの審査を厳格化していることが大きいという。

タイ経済の成長率は2026年第2四半期に1.9%となり、第1四半期の2.8%から減速した。

ピックアップは使用部品の約90%を国内で生産している。
このため販売低迷が長引けば、完成車メーカーだけでなく、部品メーカーをはじめとするサプライチェーン全体に影響が及ぶ。

数十年前に日本からタイへ生産拠点が移され、現在では120カ国以上へ輸出する主要産業に成長したとスラポン氏は説明している。

生産減少によって、一部の部品メーカーでは廃業や海外への投資移転も起きているという。

◆政府保証で自動車ローン促進を

産業界は対策として、政府による信用保証制度の導入を求めている。

タイ商業・工業・銀行合同常設委員会(JSCCIB)は以前、金融機関が差し押さえ車両で実際に被った損失について、政府系基金が1台当たり最大5万バーツを保証する仕組みを提案した。

金融機関のリスクを軽減してピックアップ向け融資を増やし、販売と生産を回復させる狙いだ。

FTIは、生産回復によって部品産業などの雇用と所得が増えれば、国内消費の拡大や家計債務の返済能力向上につながるとみている。
企業の投資や雇用、政府の税収増加にも波及し、経済全体の好循環を生み出せると主張している。

◆新車買い替え策にも期待

政府が検討している「古い車から新しい車への買い替え促進策」についても、FTIは基本的に賛成している。

自動車業界は、PM2.5による大気汚染が深刻化した時期から同様の制度を政府に提案してきた。
古い車を市場から減らすことで、新車需要の喚起だけでなく、大気汚染の改善にもつながると期待する。

一方、対象車両を車齢何年以上とするのか、新車購入への補助をどの車種に適用するのかなど、制度の詳細については今後の検討課題となる。

◆7月のBEV販売は2倍超

7月のタイ国内自動車販売は5万9,196台で、前年同月比20.07%増えた。

BEV(バッテリー式電気自動車)の販売は2万989台と122.08%増加し、市場全体の35.46%を占めた。
一方、内燃機関の乗用車は7,654台と34.58%減少した。

ピックアップの販売も16.22%減となった。
金融機関による融資審査の厳格化が続いており、自動車ローンは7.8%縮小したとされる。

生産面では、7月の自動車生産が11万7,383台と前年同月比6.12%増えた。
電気乗用車は1万3,422台と271%増、プラグインハイブリッド車(PHEV)は1,661台と295.48%増、ハイブリッド車(HEV)は2万4,173台と95.35%増えた。

これに対し、内燃機関の乗用車生産は8,251台と62.49%減少した。
1~7月の自動車生産は83万4,595台で、前年同期比0.09%減だった。

FTIは、タイが世界有数の自動車生産拠点である一方、自国の完成車ブランドをほぼ持たないという産業構造を指摘している。
海外から低コストの完成車が大量に流入すれば国内産業への影響が大きいとして、税制の公平化や政府支援を通じて国内生産基盤を維持する必要があるとの立場を示している。

そもそも、輸入EVを促進させたタイ政府の戦犯は誰なのか?
そこをはっきりさせると、答えが見つかるのではないだろうか。

関連記事

最新記事

月間人気記事TOP10

ページ上部へ戻る