Nidec、カンボジア・ポイペト工場を閉鎖。生産をタイに移管、物流正常化の見通し立たず。

日本のモーターメーカー、Nidec(ニデック)が、カンボジア西部ポイペトの工場を閉鎖し、生産をタイへ移管することが分かった。
タイ・カンボジア国境情勢の悪化に伴う物流の停滞が背景にあり、従業員724人に影響が及ぶ。

これまでポイペトで生産した部品は、トラックで国境を越えてタイ国内のニデック工場へ輸送していた。
しかし、2025年に国境地帯で衝突が発生して以降、移動制限や陸路の国境閉鎖が長期化。物流正常化の見通しが立たないことから、同社はポイペトでの生産継続が困難と判断したという。

生産は既存のタイ工場へ移管する。
Nidecはタイのボーウィンとピントンにダイカスト部品の生産拠点を持つ。
カンボジア工場の閉鎖による業績への重大な影響は見込んでいないとしている。

Nidecは2012年、タイの生産・物流網を活用しながら労働集約的な工程を周辺国へ移す「Thailand Plus One(タイ・プラスワン)」戦略の一環としてカンボジアに進出した。
タイ国境に近いポイペトは、通常であればタイ側の工場やレムチャバン港への輸送に適した立地だった。

しかし国境閉鎖後は海上輸送や第三国経由への切り替えを余儀なくされ、一部では輸送コストが数十倍に膨らんだという。
カンボジア労働省は、物流費の急騰と受注減少が工場閉鎖の主な要因になったとしている。

同省は、Nidecが未払い賃金や退職補償などを労働法に基づいて支払うとしており、政府も従業員の再就職や職業訓練を支援する方針だ。

Nidecは今年、バンテアイ・ミエンチェイ州で閉鎖を発表した3番目の大規模工場となる。

これまでに中国系のML Intimate Apparel(Cambodia)が4月に閉鎖し、683人が影響を受けたほか、タイ系Hi-Tech Apparel(Cambodia)も8月末に操業を終了し、2,532人に影響した。
Nidecを含む3工場では、合わせて約4,000人の雇用に影響が及ぶ計算となる。

労働者の権利を支援する団体からは、影響が工場内だけにとどまらないとの懸念も出ている。
従業員が収入を失えば、ポイペト周辺の賃貸住宅、飲食店、小売店、運送業など、工場従業員の消費に依存する地域の事業者にも波及する可能性がある。

今回のNidecの工場閉鎖は、国境をまたぐ物流に大きく依存するサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにした形だ。

なお、今回の閉鎖はNidecの東南アジア撤退を意味するものではなく、同社はタイをはじめ、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどで引き続き事業を展開するとしている。

 

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