タイの首都にはびこる光と影「バンコク・パラドックス」とは?

最近「バンコク・パラドックス」という言葉が流行語になりつつあると言います。
一体、どういう意味なのでしょうか。

タイの経済の中心地とされるバンコクは、一見するとキャリアチャンスにあふれ、投資や近代的な都市生活が期待できる「希望の都市」としての表面的なイメージがあります。

しかしその裏側では、生活費の高騰と賃金の停滞によって生活の質が年々悪化しているという、深刻な構造的問題が浮き彫りになっています。

これが現在、「バンコク・パラドックス(矛盾)」と呼ばれ始まっている現象です。

世界都市との収入比較。バンコクは59位にとどまる

ドイツ銀行(Deutsche Bank)の世界主要都市における収入と生活費に関する調査によれば、2025年時点でバンコクの平均月収は28,600バーツ(年収約343,000バーツ)で、世界59位にランクイン。

これに対し、スイスのジュネーブ、チューリッヒ、デンマークのコペンハーゲン、シンガポールなどでは、月収15万~27万バーツ超とされ、ジュネーブはバンコクの約10倍の収入を誇ります。

バンコクは生活費が東南アジアで最も高い水準にあるにもかかわらず、収入は中規模都市並み。
結果として、多くの住民が経済的安定を得られず、負債に頼る暮らしを強いられているといいます。

家計債務は年収の181%に達する

タイ銀行(Bank of Thailand)の統計によると、バンコクの世帯債務は平均で収入の181%に相当。
つまり、年収約34万バーツに対し、負債額は約62万バーツに達しており、国際的な安全基準を大きく上回る水準です。

一方で、スイス・チューリッヒの債務比率は51%、ドイツ・フランクフルトでは45%にとどまり、高収入ながら負債の圧力が小さいのが特徴です。
バンコクの住民は貯蓄や投資に回せる資金が少なく、生活の質の向上が困難な状況にあります。

上がり続ける物価と停滞する賃金

バンコクでは、食品、住宅、交通、光熱費など生活に欠かせない支出が年々上昇しています。
これに対し、収入はインフレや生産性の向上に見合うほど増加しておらず、実質的な可処分所得は減少しています。

結果として、多くの人が毎月の生活費を個人ローンやクレジットカードで補填する悪循環に陥り、負債がさらに積み上がる構造になっています。

バンコク・パラドックスの本質

この矛盾は、単なる数字上の問題ではなく、都市構造そのものに根差しています。
表面的には超高層ビルや高級モール、無限の可能性を持つ都市に見える一方で、実際のところ、多くの市民が「将来を築けない」経済的困窮に直面しているのです。

バンコク・パラドックスを生む主な要因

①生活費の急騰:不動産、交通、食費、光熱費などが継続的に上昇
②収入の伸び悩み:経済成長の恩恵が偏り、賃金上昇が不十分
③経済構造の偏り:観光やサービス業への依存が高く、外的要因に脆弱
④債務の増加:安易な与信と経済的困難によって、家計負債が危険水準に

大枠でその通りだと思うのですが、バンコクにいる人の給料が月額約28,600バーツとは、随分高いと思うのですが、どうでしょうか。
超格差社会なので、超高給取りと最低賃金層とを平たくすると、ここまでになるのかもしれませんが…。

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