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今、巷で囁かれている「タイ政府が破綻状態」は、本当なのか?
- 2025/5/21
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最近、世間でまことしやかにささやかれているのが「タイ政府が破綻している(broke government)」と言葉。
特に2025年度、8,650億バーツの財政赤字が発表されたことから、多くの人々がタイ政府やその財政状況が「破綻している」とみられるようになりました。
はたして、この見方は正しいのでしょうか。
「国家の破綻」とは何か
国が経済的に「破綻」あるいは「倒産」状態にあると見なされるのは、債務不履行(ソブリン・デフォルト)が発生し、それが公的債務危機を引き起こし、国際通貨基金(IMF)などの国際機関からの支援を必要とする状況を言います。
タイは1997年のアジア通貨危機でこのような状況を経験しました。
バーツが急落し、外貨建て債務が政府の返済能力を超える水準まで膨らみました。
その結果、IMFからの借入を余儀なくされ、2007年まで続く10年間の債務再編を行いました。
現在でも、タイは金融機関開発基金(FIDF)への返済を続けています。
現在の財政状況:「破綻」ではない
2024年時点で、タイは2,360億米ドルの外貨準備高を保有しており、これは輸入の8か月分および短期対外債務の約2.5倍に相当します。
これらの指標は、タイの財政が堅調であることを示しているといいます。
副首相兼財務大臣のピチャイ氏は、「タイ経済は強く、投資家にとって魅力的である」と述べ、2024年には300億米ドル超の投資が行われたことを挙げました。
政府は3.0〜3.5%の経済成長を目標としており、これは地域的に見ても標準的な水準です。
財務省副大臣の見解と構造的リスク
財務副大臣のパオプーム氏は、世界銀行およびIMF東アジア・太平洋地域の投票グループとの会合において、タイの経済安定性を強調し、経済回復と競争力強化に向けた明確な政策を紹介しました。
ただし、いくつかの構造的リスクも存在します:
2024年の公的債務はGDPの63.28%で、政府の設定した上限70%に近づいており、将来の返済能力に影響を及ぼす可能性があります。
家計債務はGDPの89.6%で、国内消費や投資を抑制し、経済成長や税収に悪影響を及ぼすおそれがあります。
経済成長率が潜在水準を下回っているため、税収が目標に届かないリスクもあります。
大規模な景気刺激策が財政負担を増加させ、構造改革が不十分なままだと長期的な安定が損なわれる可能性があります。
結論:「破綻」ではないが慎重さが必要
政府が一時的に資金不足になったり、赤字予算を組むことは珍しいことではありません。
それだけで即「破綻」とは言えません。
しかし、その状況に安心しすぎてはいけません。
高水準の公的・家計債務や経済成長の鈍化など、構造的な問題が長期的なリスクをはらんでいます。
そのため、大規模な財政出動と並行して、税収を持続可能にする構造改革が不可欠です。
現政権のばら撒き一辺倒の経済政策や他力本願の観光業におんぶに抱っこでは、本当の意味での「破綻」が訪れる日も現実味を帯びてくる…、かもよ。