タイ人も勘違い「ロックダウン」は解雇ではない! 労働紛争時に使用者が行使できる権利とは?

タイのダイキンが「ロックアウト」を発動したことは衝撃的だった。
ちなみに「ロックアウト」とは、労使紛争が起きた際に、経営者側が対抗策として事務所や工場、店舗などの職場を一時的に閉鎖し、労働者の就業を認めず、その間の賃金も支払わない措置のことを指す。
労働者側のストライキなどの争議行為に応じた経営側の対応手段となっている。

タイ語では、「ปิดงานงดจ้าง」(ピットガーンゴットガーン)に相当する。

「ロックアウト(ปิดงานงดจ้าง)」とは何か? 解雇と同じなのか?

2025年12月5日、ダイキン(アマタナコン)が労働組合とのボーナス争議が解決しないため、この「ロックダウン」を宣言した。
これを受けて、「解雇と何が違うのか」と疑問の声が広がった。
(一部、タイ人SNSでは、従業員を解雇したとまで伝え拡散していた)

タイの労働法関連の有名ページ「労働法クリニック」は、次のように説明している。

●「業務停止(ปิดงาน)」=解雇ではない

これは、労働紛争が発生し、法律の定める手順で合意に至らなかった場合に、使用者が行使できる対抗手段である。

この措置は、タイの労使関係法の以下の条文を根拠としている。

・第21条・22条

 労働条件に関する交渉が不調となり、調停が成立しなかった場合、労働紛争として「業務停止(ロックアウト)」や「ストライキ」が認められる。

・第34条第2項

 使用者が業務停止を行う場合、24時間前までに調停官および相手方に書面で通知する義務がある。

法律上の定義では、

「ロックアウト」とは、労働紛争を理由に、使用者が一時的に労働者を働かせない措置

とされている。

業務停止が合法的に行われた場合の効果

①雇用契約は継続する(=解雇ではない)

 業務停止はあくまで「一時的な業務中断」であり、解雇ではない。

②使用者は賃金を支払う必要がない

 労働者が働けないのは使用者が合法的手続きに基づき業務を停止しているためで、その期間の賃金は支払われない(最高裁判例による)。

③違法な業務停止の場合は賃金を請求される可能性

 (例:労働紛争がないのに停止する、停止禁止の業種で停止する、通知をしていない等)

政府が介入できる可能性

業務停止が公共の秩序や国の安全に悪影響を及ぼす恐れがある場合、労相大臣は他の労働者を代替要員として配置できる権限を持ち、使用者はそれを受け入れなければならない。(第35条(3))

業務停止の終了

以下のような場合に終了する。

・当事者間で合意が成立
・労働紛争の仲裁人を選任し、仲裁判断が出た場合(第26条)
・重要事業(鉄道・病院・水道等)における労働委員会による判断(第23条等)
・使用者が業務停止の終了を宣言した時

 

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