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BBCの分析が本誌と一致!「タイ=カンボジア国境紛争は、何故起こったのか?」
- 2025/7/25
- もっと知りタイランド

これまで本誌では、度々同様の指摘をしてきましたが、やはり外国メディアは同じ見方をしています。
BBC東南アジア特派員のジョナサン・ヘッド氏は、タイとカンボジア間の国境紛争に関する分析記事を「友情の崩壊:タイ・カンボジア国境戦闘の背景」というタイトルで発表しました。
この記事では、両国が国境を接していることによる領有権争いが、過去にもたびたび武力衝突に発展してきた歴史を紹介しています。
2008年や2011年には激しい戦闘があり、40人が死亡しました。
しかし、これらの衝突は比較的短期間で沈静化していました。
しかし2025年7月24日の衝突では、タイ側で15名(うち1名は兵士、それ以外は民間人)が死亡。
一方、カンボジアも民間人1名の死亡を発表しています。
この衝突の前日(23日)には、タイ兵5人が地雷で負傷しており、これが火種になったとされています。
ジョナサン氏は「なぜ今回の衝突は急激に激化したのか?」という問いを投げかけます。
分析によれば、その背景にはタイとカンボジアの政権中枢にある“チナワット家”と“フン家”の関係悪化にあるといいます。
流出した電話音声で決定的に
先月末、タイの首相ぺトンタン・チナワット氏とカンボジアの上院議長で元首相のフン・セン氏との電話内容が流出しました。
その中で、ぺトンタン氏がタイ軍幹部を批判する発言をしており、国内で批判が高まり、最終的に彼女は憲法裁判所によって首相職務を一時停止される事態に発展しています。
この一件は、両家の長年の親密な関係を破綻させ、互いに対する「裏切り感」を生んだといいます。
タイではその後、フン・センと近い関係にあるカンボジア人実業家がコールセンター詐欺の首謀者として捜査対象になり(ゴック・アン事件)、外交関係も悪化、タイはカンボジア大使を国外退去させ、同時に自国の大使も召還するまでに至っています。
二国とも譲歩できぬ状況
ジョナサン氏は、両国ともに「妥協できる強力な指導者を欠いている」と分析しています。
カンボジアのフン・マネット首相(フン・センの息子)は、まだ政治的求心力に欠け、父フン・センが代わりにナショナリズムを煽っている状況です。
タイは、タクシン派主導の不安定な連立政権なのにもかかわらず、経済停滞や米国の制裁圧力により、対外的に弱腰な姿勢は取れない状況にあります。
両国は経済的にも困難を抱えており、タイでは中国人観光客が減少し、オンライン詐欺工場への誘拐懸念が深刻化しています。
最後の希望は「熟練の政治家」か
この記事では、タイのタクシンとカンボジアのフン・センという、共に経験豊富な政治家の存在が今後の鍵となるかもしれないと指摘しています。
また、ASEAN各国がこの対立にどう関与していくかにも注目が集まっています。
しかし、最大の謎は、「なぜフン・セン氏が長年の友人関係を壊し、この対立を煽る道を選んだのか?」という点にあります。
考えられる理由としては、
①タイがオンライン詐欺グループの取り締まりを強化したこと
②タクシン氏が進める合法カジノ計画がカンボジアのカジノ業界に脅威を与えたこと
③あるいは、影響力が衰えたタクシン氏を切り捨て、自らのナショナリズムを演出する戦略だとも考えられるという。
大枠のところで同意見なのですが、BBCの分析と本誌との分析で決定的に異なるのは、17年間国外逃亡していたタクシンをタイに帰国させ、刑務所に一度も行かずに刑期を全うさせてしまったことで、国内を分裂させてしまったことがそもそもの始まりだという点です。
タイ国内が、いつまでもこの問題を引きずりながら、一歩も前に進めなくなってしまったことが、政治から経済、国際情勢すらも悪化させる結果となったという点です。
日本のタクシンLoveな某クォリティペーパーには、思いもつかない分析だと思いますが!