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ミャンマーの中国人詐欺拠点、あれからどうなった? タイ政府は「有名人のケース」しか対処しないと批判の声。
- 2025/5/26
- 事件(タイローカル)

5月24日、人身売買被害者支援の市民社会ネットワークのクリッティヤ氏は、タイ国家人権委員会に対し、ミャンマーのミャワディ地域、カレン民主仏教軍(DKBA)が支配する地域に拘束されているとされる157人の人身売買被害者の緊急救出を求める書簡を提出しました。
凶悪な中国マフィアによる詐欺拠点、3か所が特定
クリッティヤ氏によれば、各国の大使館、被害者の家族、そして被害者自身が助けを求めているが、タイの当局は効果的な対応ができていないといいます。
特に「SNSで注目された件」や「有名人が関与するケース」など、国際的な注目を集めた場合のみ迅速に行動する傾向を批判しています。
「知名度の低いケースでは、被害者本人や家族が助けを求めても無視されがちです。関係機関の連携も不十分です」と彼女は述べています。
彼女のネットワークは2024年5月以降、政府の支援なしで被害者の救出を目指し、あらゆるチャンネルと連携して対応を続けてきました。
タイ政府は現在も、国境周辺で活動する詐欺シンジケートや人身売買ネットワークに対して、明確な国家方針や強い立場を示していないと指摘しています。
260人が一時帰還、しかし支援の仕組みに課題
2025年2月12日、カレン民主仏教軍は260人をタイの「ラーチャマヌー部隊」に引き渡しました。
その後、ターク県の社会開発・人間安全保障省による調査で、258人が人身売買被害者と認定されています。
これを受けて、2月19日には、タイ政府がミャンマー・中国との三国間政策を導入。
これにより、違法労働のためにミャンマーに人身売買された外国人は、ミャンマー当局を通じて帰還させられることが取り決められました。
しかし、母国の大使館がタイにない国(例:エチオピア)の被害者の場合、手続きの遅延や不透明さが深刻な問題となっている。
被害者キャンプにマフィア侵入、暴行や性被害も
さらに、中国マフィアがDKBAのキャンプ内に侵入し、被害者を強制労働に引き戻そうとする事例も報告されています。
彼らは身体的暴力、性暴力、武器の使用などで恐怖と混乱を生み出し、特に女性、妊娠中の人、持病を抱える人々が適切な医療を受けられず苦しんでいると言います。
医療搬送の試みも支援なし、死者も発生
被害者の一部はメーソート病院への医療搬送が必要とされているが、越境搬送は実現していません。
搬送を待つ間に死亡した被害者もおり、流産や深刻な健康被害のリスクにさらされています。
特に経済的支援のない被害者(例:エチオピア人)にとっては、無期限に放置される可能性もあると言います。
詐欺拠点への締め付け効果は限定的
過去1年で、タイ政府は詐欺拠点へのインフラ遮断(インターネット、電力、燃料)や国境封鎖といった取り締まりを行ってきました。
しかし、その効果は限定的であり、一部の詐欺拠点はさらに奥地へ移転して活動を継続していると言います。
彼らはStarlink(スターリンク)衛星通信や密輸された燃料を利用してネットワークを現在も維持しているとのことです。
クリッティヤ氏は、このように述べています。
「これまでに1万人以上の外国人が帰還しましたが、これらの人身売買や詐欺を主導し資金提供している本当の首謀者たちは、誰一人として処罰されていません。」
国連薬物犯罪事務所(UNODC)および米国平和研究所(USIP)によると、ミャンマー国内の被害者数は45か国以上から10万人〜12万人と推定されているが、救出されたのはそのうちの10%未満に過ぎないと言います。
国家的人権方針の欠如、NRMの軽視
さらに、タイ政府には人身売買被害者を保護する明確な人権政策がなく、被害者識別に不可欠な「国家リファラル・メカニズム(NRM)」の活用が軽視されている傾向があると言われています。
NRMは、被害者の保護・調査・司法手続きのために重要な制度となっています。
このような状況を受けて、支援ネットワークはタイ国家人権委員会に対し、関係国の大使館や被害者の母国との仲介役となるよう要請しています。
そして、157人の拘束被害者を含め、まだ発見されていない、あるいは手が届いていない被害者の即時保護と帰還を、国際人権基準に沿って実現するよう求めています。
まあ、直接金にならないことは、極力やりたがらないのが今のタイ政府なので、「そんなことをしてメリットありますか?」といわれるだけかもしれません。