バンコク「エータス ホテル&レジデンス」20年越しの違法建築問題に決着。役人の過失は不問?

11月26日、タイ最高行政裁判所は、Aetas Bangkok Hotel (エータス)と Aetas Residence が位置するパトゥムワン区事務所長およびバンコク都庁(BMA)に対して、Larppratharn社が求めていた損害賠償請求を棄却した下級審の判断を支持した。

タイ消費者協議会(TCC)によれば、これにより解体作業への法的障害は完全になくなり、バンコク都庁は早ければ12月1日にも解体命令の執行を開始できるという。

TCCは声明で「Aetasのケースは、市民、政府機関、市民社会、そしてメディア監視が連携した象徴的な事例です」と述べ、バンコクの狭いソイ(路地)に建つ高層建築物の監督強化につながることを期待するとした。

Larppratharn社は、パトゥムワン区事務所がソイ・ルアムルディーの道路幅を誤って証明し、その認証に基づき18階および24階建てビルを建設したとして区長の過失を主張していた。

建築管理規則では、隣接する公道の幅が10メートル以上でなければ高層建築物は許可されない。しかし後の裁判で、ソイ・ルアムルディーは全区間でこの基準を満たしておらず、建設そのものが違法であると認定されいた。

 

2005年から始まった反対運動

このプロジェクトに対する住民の反対は、裕福な家庭や高級コンドミニアムが並ぶ2005年にさかのぼる。
当時、住民は区事務所の承認に異議を申し立てた。

その後、王室医師の故ソンクラーム氏や元大侍従長のクワンケーオ氏らが中心となり、2008年に消費者財団の支援を受けて中央行政裁判所に訴訟を起こした。
この頃には建設が進んでおり、建物(エータス)は2010年にオープンした。

2012年、裁判所は建築物が建築管理法に違反するとして60日以内の解体を命じた。
その後の上訴でも2014年に最高行政裁判所が命令を支持し、パトゥムワン区長とバンコク都知事に執行責任があると判断した。

全面解体は必須ではなかったが、幅10メートル未満のソイに建つ場合、建物の高さを23メートル以下にする必要があるため、建物の高さ削減が求められた。

 

裁判の長期化と住民の不満

事業者側は、ソイ・ルアムルディーが10メートル未満となった原因は不法占拠者にあると主張し、バンコク都庁が占拠者を排除すべきだったと訴えたが、裁判所はこれを退けた。

解体命令は2016年10月31日に現地へ掲示されたものの、作業は進まず、周辺住民は不満を募らせていたという。

その後、Larppratharn社は2021年11月に財務的損害を理由にバンコク都庁を提訴したが、中央行政裁判所は時効を理由に受理しなかった。
解体命令の掲示日(2016年10月31日)から1年以内に訴えを起こす必要があり、4年遅れだったという。

最高行政裁判所もこれを支持し、「原因行為」は2016年の命令掲示であり、2021年の解体命令は単に当初の決定を再確認したにすぎないとした。

これは酷い話しだ。
役所の人間がミス(おそらくミスでもない)を犯したことにより、手順を踏んで建設を行ったにもかかわらず、逆にミスを犯した側が全くの責任をとらず、事業者側に一切の責任を押し付けるとは。
同様のケースで、アシュトンアソークの問題があるが、こちらは超法規的措置で救済となっている。
エータスの事業規模と訴えてきている人物(上級国民)、アシュトンアソークのケースとはその辺りが異なるからだろうか。

余談ではあるが、私は個人的にこのエータスの会長と親しくさせて頂いており、いつもここのロビーで会長に出会うと、お茶やケーキ、食事などを振舞っていただいていた。
大金持ちのような風情もなく、本当に近所にいそうな優しいおじいさんだった。

周辺住民の主張は正しい。
ただ責任の所在が役所にあるにもかかわらず、このような判決は不当以外の何物でもない。
この国の司法に公平性など求められないのは、世界的なランキングでも明らかであるが、今は悔しさしか覚えない。

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