「人身売買報告書2025」カンボジア「ティア3」、タイ「ティア2」。最低基準満たせず。

米国務省が発表した「2025年 人身売買報告書(TIP Report)」は、東南アジアにおける人身売買の深刻な状況を明らかにしました。

特にカンボジアは4年連続で最低ランクの「ティア3」に留まり、タイは少し上の「ティア2」のままです。

◆カンボジア:最低ランク「ティア3」

報告書によると、カンボジア政府は人身売買の撲滅における最低基準を満たせず、問題解決に向けた実質的な努力も行っていない。

特に「オンライン詐欺センター」や「コールセンター詐欺集団」における強制労働への対応に失敗している点が強調されています。

さらに、一部の高官が犯罪組織に加担、または利益を得ている疑いがあり、司法妨害や証人・被害者への脅迫まで行われていると報告されています。

この「ティア3」評価により、カンボジアは人道支援を除く米国からの援助制限を受ける可能性があり、強い外交的メッセージが送られています。

今年はラオスも「ティア3」に格下げされ、ミャンマー・カンボジアと並ぶ形となり、メコン下流地域における危機の深刻さを示しています。

◆タイ:ティア2

一方のタイは、最低基準を完全には満たしていないものの、人身売買対策で「重要な努力を行った」と評価され、「ティア2」を維持した。

報告書では、以下の進展が認められている。

・犯罪者に対する捜査と起訴件数の増加
・外国政府との協力による被害者の保護・送還
・被害者と加害者を区別するための制度的プロセスの整備

しかし米国は、タイが最高位「ティア1」に到達するためには、人身売買に関与する政府関係者への捜査と訴追を進める必要があると厳しく指摘しています。

◆タイとカンボジアの評価推移

タイの評価履歴(2001〜2025年)

・2001〜2013年:主に「ティア2」または「ティア2・監視リスト」
・2014〜2015年:「ティア3」に格下げ
・2016〜2025年:主に「ティア2」継続

カンボジアの直近5年

・2021年:ティア2・監視リスト
・2022〜2025年:ティア3(4年連続)

◆報告書の意味

2025年のTIP報告書は、東南アジアで急増する「コールセンター詐欺」や「オンライン詐欺拠点」が、国境を越えた犯罪であると同時に、各国政府の人権保護能力や透明性を映し出す「鏡」であると警告しています。

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