ダイキンth のボーナス問題はなぜ解決しないのか? そこにはタイ独特の報奨制度にあった!

先ほどお伝えしました通り、12月にはいっても未だ解決をみない、タイのダイキン・ボーナス問題。
一体、何が問題となっているのでしょう。

ダイキンの労働組合が、当初提示されたボーナス 5か月+特別手当12,000バーツ に不満を持ったことにこの問題が始まりました。

この件は、タイ社会でも二極化した議論が起きている。
一方では「従業員は欲張りすぎだ」、もう一方では「会社がケチで、本来より少ない」と批判。

タイメディアは、あるダイキン従業員から得た情報をもとに、問題の解像度を高める解説を行っています。

(情報が100%正確とは限らないため、読者はさらに判断が必要です)

■ 消えた7か月分のボーナスと、誰も予想しなかった原因

まず前提として、工場労働者は一般企業の従業員より 月給は低いがボーナスが多い 傾向にあります。

例:

・一般企業のソフトウェアエンジニア

 月給 30,000バーツ + ボーナス2か月 → 年収 420,000バーツ

・工場のソフトウェアエンジニア

 月給 18,000バーツ + 残業代 + ボーナス8か月 → 年収 約420,000バーツ

つまり、工場労働者にとって ボーナスは生活に直結する非常に重要な収入源 となっている点です。

ダイキンは今年も業績が好調で、本来なら例年通り 「ボーナス7か月」を支給できたはず でした。

しかし、予想外の出来事が発生し、結果として 5か月+特別手当12,000バーツ に縮小したと言います。

その原因は、売上でも経営でもない。まさかの 「金(ゴールド)価格の異常高騰」 にあると言われています。

■ 長年の“金の報奨制度”が、今年は会社の大きな負担に

ダイキンには長期インセンティブとして、珍しい制度があります。

10~15年間、病欠・私用休暇を一切使わず、年次有給のみで働き続けた従業員に「金(ゴールド)」を支給する というものです。

これは従業員が長年コツコツと積み上げてきた努力の象徴であり、多くの人が楽しみにしている制度だと言います。

しかし今年、3つの要因が重なって問題が発生しました。

①金を受け取る条件を満たした従業員が例年以上に多かった(約1,000人とも)
②その多くが「労働組合」のメンバー
③金価格が前年に比べほぼ倍まで高騰

これらが同時に起こり、会社がボーナス原資として確保していた予算では「金(ゴールド)」を支給しきれなくなったのだと言います。

■ 会社案:ボーナスを増やす代わりに「金の報奨」をカット

そのため、会社側は問題解決のためこのような提案しました。

・全従業員のボーナスを 7〜8か月に増額
・ただし、10年以上勤務者には「金の支給を取りやめるか、金の代わりに現金を支給」

※ 今年は金のコストが異常に高く、会社が負担しきれないため。

■ 従業員側:簡単に諦められない

しかし従業員は、簡単に諦めきれないというジレンマに突入しています。
10〜15年の間、①
病欠なし、②私用休暇なしという生活は、タイ人にとって相当な忍耐・努力・節制が必要となります。

その結果としての「金(ゴールド)」は、単なる「おまけ」ではなく、積み重ねた10年超の努力の象徴 であり、仕事を続ける上でのモチベーションに持っていました。

そのため一部従業員が、譲れない姿勢を見せているのだというです。

■ これは対立ではなく、「外部要因」が生んだ問題

この問題を 「従業員が貪欲」「会社がケチ」 と片付けるのは短絡的だと言えます。

双方に合理的な理由があり、どちらも自分の正当性を守ろうとしているためです。

根本原因は予測不能な外部要因、つまり 金価格の急騰 にあるからなのです。

■ Win–Winの解決策はあるか?

固定観念なしに対話すれば、例えば以下のような折衷案があり得るとタイメディアは主張しています。

①「金」の量を減らし、今年の初めの価格 を基準に算出
②「金」の支給を 2〜3年に分割して分配
③希望者は金の一部を 現金に変更するオプション を選択

これはアジア通貨危機を経験し、自国の貨幣ではなく「金」を信仰するタイならではの問題なのかもしれません。
どのような落としどころとなりますでしょうか。

ダイキンth、2025年のボーナス提示額、10回目の交渉も未だ合意を得ず。

関連記事

最新記事

月間人気記事TOP10

ページ上部へ戻る