なぜタイでは、道路のど真ん中で花輪が売られているのか? ある精霊にまつわる物語。

タイで車に乗っていると、交差点などで様々な物売りに遭遇することがあります。
その中でもよく見かけるのが、花輪を売る行商人です。
タイでは、道路のど真ん中でなぜ花輪を売るのでしょうか。
その答えにタイメディアが答えていました。

なぜ露店商が、赤信号の場所で花輪を売るのでしょうか?

その答えは、タイの文化や信仰体系の中にあります。

多くのタイ人は「メーヤーナーン(แม่ย่านาง)」という守護の精霊を強く信仰しています。

メーヤーナーンは、乗り物とその乗員を守る存在だと信じられています。

街頭で売られている花輪は、実はこのメーヤーナーンへの供物であり、安全な旅と交通事故からの守護を祈るためのものなのです。

この伝統は車に限ったものではありません。

昔、タイの船は木で作られており、木には精霊が宿ると信じられていました。

その精霊を敬い、航海の安全を祈るために、船首には花輪や色鮮やかな布が結びつけられたのです。

やがてこの信仰は陸上の乗り物にも広がり、安全祈願として花輪をメーヤーナーンに捧げる風習が生まれました。

花輪は色鮮やかで、細かく丁寧に作られています。

ジャスミン、マリーゴールド、バラなどの花が使われ、

それらを心を込めて編み上げることで、尊敬と霊的な守護の象徴となっています。

花輪を捧げることは、「見えない守り神の存在を認め、感謝を捧げる」という行為でもあります。]

また、この風習はタイの街角で活躍する露店商たちの存在を示すものでもあります。

多くの露店商は何十年にもわたり、交通量の多い交差点で花輪や果物、小さなサービスを売り続けています。

運転手にとって花輪を買うことは、信仰的な行為であると同時に、こうした小規模商人の生活を支える手助けでもあるのです。

もし次に、タイで花輪が売られているのを見かけたら、それが単なるお土産や飾りではないことを思い出してください。

それは「安全祈願の供物」であり、何世紀にもわたる信仰と文化が息づく行為なのです。

船から車へ、水上の旅から都市の道路へ──

花輪は今も「安全」「信仰」「敬意」の象徴であり続けています。

タイでは、たとえ小さな花一輪にも、深い文化的・精神的な意味が込められているのです。

その割に交通事故死者数が一向に減らないところを見ると、メーヤーナーンはもうどこか別の国へと旅立ってしまったのかもしれませんね。

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