19世紀「タイ王室ファッション革命」西洋と伝統が融合した“ハムスリーブブラウス”誕生秘話。

タイの伝統衣装にも歴史があります。

伝統的なタイ衣装といえば、優雅なサバイ(肩掛け布)、絹のスカート、露出した肩といったイメージが浮かぶ人も多いでしょう。

しかし19世紀後半、タイ王室のファッションは大きな転換期を迎えます。
それは、地元の伝統と西洋文化が融合した、今なおタイの文化的ファッションに影響を与えている変革の時代でした。

西洋とタイ伝統が融合した「ハムスリーブ・ブラウス」の誕生

この時代を象徴するファッションアイテムの一つが「ハムスリーブ・ブラウス」です。

このスタイルは、近代化を推進し西洋との外交関係を強化したラーマ5世(チュラロンコーン大王)の治世中に生まれました。

ビクトリア朝時代のヨーロッパやロシア帝国の宮廷文化から影響を受けたこのブラウスは、キュッと締まったウエストラインに繊細なレースの装飾、手首に向かって絞られた大きく膨らんだ袖(ハム型スリーブ)などのデザインが特徴で、当時のヨーロッパの流行を反映しつつも、単なる模倣ではなく、タイ独自の文化と調和したものとなっていました。

伝統と近代の調和

王室の女性たちはこのブラウスに、ジョーン・クラベンと呼ばれる伝統的な下衣(ズボンに似た巻きスカート)を合わせ、髪型はタイらしい優雅なアップスタイルに整えます。

その結果生まれたのは、東洋と西洋のエレガンスが融合した洗練されたスタイルでした。

これは単なるファッション以上に、「近代化と国際化を進める中でも、タイとしての文化的アイデンティティを保ち続ける」というシグナルでもありました。

現代にも息づく「ハムスリーブ」の精神

このハムスリーブ・ブラウスは1895年頃に王宮内で流行し、その後「変革の時代」を象徴するスタイルとして定着しました。

現在でも、学校のパレードや歴史の再現イベント、国の文化行事などでたびたび登場し、タイの伝統と誇りをファッションで表現する場面で選ばれています。

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