中国発 EV 戦争勃発?! 大幅値下げの裏に、世界在庫危機と故障の際の部品不足。

世界のEV市場では、在庫の急増が価格競争を再び引き起こしており、中国メーカーによる大規模な値下げが始まったと業界では警鐘を鳴らしています。

タイ工業連盟(FTI)は「自動車市場は常に競争的であり、メーカーは十分な資本と迅速な対応が必要」だと指摘しています。
今後は、アフターサービスが消費者の信頼を左右する鍵となるであろうと分析されています。

中国:BYDが最大34%値下げ、他社も追随

5月23日、世界最大のEV販売メーカーBYDは、中国国内で22モデルに及ぶ大幅な値下げを実施しました。

例でいうと、セダン車「Seal」は最大34%引き、小型車「Seagull」は20%引きと言う価格です。

これは、政府主導の下取り支援プログラムと連動しており、古い電化製品や自動車と引き換えに新車を購入する消費者にインセンティブを提供しています。

この動きを受けてGeelyやLeapmotorも5月26日以降に独自の値下げを実施しました。
最大30%割引のキャンペーンが展開されています。

在庫過多が価格戦争の引き金に

ドイツ銀行によりますと、BYDは2025年の1〜4月でディーラー在庫が約15万台に達し、これは小売販売の2週間分に匹敵するといいます。

さらに新技術「God’s Eye」自動運転システムの受注も伸び悩み、在庫圧力が強まっているとのことです。

Great Wall Motors(長城汽車)の会長は、「中国のEV業界は赤字続きで供給網が崩れかけている」と警鐘を鳴らし、「不健康な構造で “恒大(Evergrande)型の崩壊” が起こり得る」とすら語っています。

タイのEV市場:急成長と壁

タイでは、2022年にEV登録台数が約1万台だったのに対し、2023年で76,000台、2024年では70,100台とやや減速気味ではありますが、急成長をみせています。

その背景には、ASEAN中国FTAによる無関税輸入が中国ブランドの台頭を後押しがありましたが、過剰投資・在庫過多のリスクも浮上してきていると言われています。

今後の市場動向と課題

タイでの今後の市場動向については、自動車展示会(モーターショーなど)による一時的な販売増はあるが、市場全体は横ばいだろうとの見方が支配的です。

現在のEV市場シェアは約13~14%であり、これ以上の成長には構造的な変化が必要とされています。

MGセールスタイランドによりますと、「部品不足や修理の遅延」が消費者の信頼を損なっており、アフターサービスの質が競争優位のカギとされています。

特に事故後の車体部品など、すぐに調達できない部品の供給体制が整っていないことが問題点として浮上しています。

中国の価格戦争、タイ市場への影響は限定的

中国の大幅な値下げが話題となる中、タイ市場への直接的影響は少ないと言う見方もあります。

その理由として、世界的にEVの価格はまだICE(ガソリン車)やハイブリッドより高めであること、しかしタイは、EVがICEより安い珍しい市場であることが挙げられています。

ただし、親会社(中国本社)の戦略に左右されやすく、親会社の経営悪化はタイの子会社にも波及する可能性がありとも言われています。

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