権力への固執?! 王党派の反撃?! セター氏、首相職解任劇の裏側で何が起こっていたのか?

すでにお伝えした通り、8月14日、タイ憲法裁判所は、重大な倫理違反を理由に5対4で、セター氏の首相職を解任とする判決を下しました。

この判決は、タイ貢献党の影の大ボスとして知られるタクシン・チナワット裁判で当時、裁判官に対し賄賂でもって判決を優位に導こうとした贈収賄の罪で服役経験のあるチナワット家のお抱え弁護士ピチット氏を、首相官邸の大臣に任命したことが問題となっていました。

裁判所は、ピチット氏の任命は公共の利益よりも個人の利益を優先していることを示していると判決理由を述べています。

これとは別に、タイ貢献党が政権を取った時点で、多くのタクシン家お抱えの人物が様々な役職に復帰していました。

セター氏は判決後、裁判所の判断を尊重するが、「倫理に欠ける」首相という烙印を押されたことを遺憾に思うとコメントしました。

第30代首相の座を務めたセター氏は、任期は358日間、一年に満たない在位でした。

「率直に言って、ここには何の隠された意味もありません。私は議会のプロセスを受け入れます。私はもう政治についてコメントしたくない。次期首相に圧力をかけるべきではないので、新首相にメッセージを残すことはできません。首相候補者リストに名を連ねている人たちは皆、それぞれの長所、注目すべき点、そして短所を持っていると思います。私自身としては、他の役割で国を助けたいと思っています」と彼は語っています。

今後、下院が召集され、新しい首相候補の承認について投票が行われることになります。
現在の連立政権に参加し候補となっているのは、タイ貢献党のペトンターン・チナワット氏、タイ貢献党のチャイカセーム・ニティシリ氏、ブムジャイタイ党のアヌティン・チャンウィラクン氏、パランプラチャラート党のプラウィット・ウォンスワン将軍、タイ国民統一党のピーラパン・サリーラタウィパーク氏が上げられています。

プラユット・チャンオチャ将軍については、タイ国民党の候補者でもあるが、現在は枢密顧問官の職にあります。

今回の判決に対し、米国の通信社であるAP通信は、タイの裁判所、特に憲法裁判所がタイの王党派体制の防波堤とみなされていると報じています。
この支配層は、裁判所や選挙管理委員会などの名目上は独立した国家機関を利用して、これまでも政敵を麻痺させたり抹殺したりする判決を下してきました。

セター氏は、タイ貢献党が総選挙で第2党に終わったにもかかわらず、2023年年8月に首相に就任しました。
当時の選挙で第一党となった前進党の最大のパートナーだったタイ貢献党は、前進党を裏切り連立から除外し、前軍政政府系政党と手を結び首相の座を得ています。

結局このような行為が、自身にもブーメランになって降りかかってきたということでありますが、あの時に首相の席が空白になってでも軍政権が定めた上院議員の任期切れを待って、連立を成立させればまた違った未来が描かれたのかもしれません。
いずれにせよ、権力に固執しすぎたタイ貢献党、いや、タクシンの思惑が前面に出過ぎてしまったため、次期首相候補を見る限り、タイはまた我々の知る「民主主義」から大きく後退を余儀なくされてしまうことになります。

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