【花王】キャッサバ残渣をバイオマスとして利活用する製造モデルの調査をNEDO委託事業として開始

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)と花王インダストリアル(タイランド)(社長・清水祐二)が進める、キャッサバ残渣(ざんさ)をバイオマスとして利活用する新たな取り組み※1が、このたび、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2022年度 「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業(実証要件適合性等調査)」 第1回公募に採択されました。これを受け、花王と花王インダストリアル(タイランド)は、本事業に関する実証要件適合性等調査を開始します。
※1 技術実証事業名 「キャッサバ残渣用酵素オンサイト製造システムを用いた非可食バイオノニオン活性剤の製造モデル事業(タイ)/実証要件適合性等調査」
■NEDOエネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業とは
NEDOは、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じてイノベーションを創出する、国立研究開発法人です。国際実証事業では、安定供給、経済性、環境適合、安全性の実現に資する我が国の先進的技術の海外実証を通じて実証技術の普及に結び付け、さらに、制度的に先行している海外のエネルギー市場での実証を通じて、日本への成果の還元を目指しています。
NEDO https://www.nedo.go.jp/activities/AT1_00175.html ■背景
地球温暖化による気候変動という社会課題に対し、企業が果たすべき責任と役割は大きくなっています。花王は、新たに大気中に排出されるCO2を極小化する取り組みとして、石油由来の原材料を再生可能な植物由来資源であるバイオマスに置き換える研究を進めています。バイオマスには、トウモロコシやサトウキビなどを利用する可食バイオマスと、農業残渣などを利用する非可食バイオマスがあり、花王は食料競合回避、安定調達、環境調和の観点から非可食バイオマスの利活用を重視しています。

■これまでのバイオマスに関する研究成果

図1. キャッサバとデンプン図1. キャッサバとデンプン

バイオマスをケミカル製品の原料として利用する際は、まず酵素を使って原料用の糖に分解する工程が必要ですが、非可食バイオマスは一般的に糖に分解するのが難しく、採算性が課題でした。
熱帯から亜熱帯で多く栽培されるイモ類であるキャッサバ(図1)は、根茎部分からデンプンを抽出した後に非可食の残渣が発生します。花王は、タイで大量に発生しているキャッサバ残渣に着目。30年以上にわたって培ってきた洗剤用酵素の知見を活用し、キャッサバ残渣中の糖の分解に最適な酵素(糖化酵素)を開発しています。また、糸状菌を用いて複数種類の酵素を同時に生産する技術も応用することで、キャッサバ残渣の分解に必要な複数の酵素をひとつの設備だけで製造する方法(マルチ酵素生産システム)を開発し、簡便に糖に分解できることを確認しています(図2)※2。
※2 NEDO報告書データーベース 報告書番号:20180000000244
「平成25年度~28年度成果報告書 バイオマスエネルギー技術研究開発 バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業 バイオ燃料事業化に向けた革新的糖化酵素工業生産菌の創製と糖化酵素の生産技術開発」
 

図2. 花王がめざすバイオマス利用のイメージ図2. 花王がめざすバイオマス利用のイメージ

バイオマス利用に必要な糖化酵素は、バイオマスを加工してケミカル製品を生産するバイオリファイナリー工場まで船やトラックで輸送されるのが一般的です(図3)。しかし、マルチ酵素生産システムによって酵素生産設備をコンパクトにすることができると、同じ工場の敷地内で酵素を生産し、ダイレクトに供給を行なうシステム(オンサイト生産システム)が可能になります(図4)。花王は、独自のオンサイト生産システムを新しい製造モデルとして提案しています。オンサイト生産システムでは、輸送コストやCO2排出を抑制でき、さらに、サプライチェーン上での不測のリスクを回避するといった事業化にあたってのメリットが多くあります。

図3. 一般的な生産システム   図4. 花王が提案するオンサイト生産システム図3. 一般的な生産システム   図4. 花王が提案するオンサイト生産システム

 

 

■今回採択された事業の概要
今回採用された事業では、実証要件適合性等調査として、タイのエネルギー事情、関連政策、ビジネス環境などの情報収集を花王インダストリアル(タイランド)と協力して行ない、キャッサバ残渣の利活用に向けた製造システムの実証研究についての取り組みを開始します。

■まとめ
花王のケミカル事業では、“ケミカルスに価値をのせて、「産業の未来づくり」と「サステナブルな社会づくり」に貢献する”を合言葉に、革新的な製品やソリューション提供を通じて顧客や産業界の課題解決に取り組んでいます。将来的には、キャッサバ残渣からバイオケミカル製品を製造する一貫した生産体制の確立と事業化を検討していきます。

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