ナワット氏により世界にさらされたタイ社会に根付く権力の乱用。時代錯誤のパワハラ蔓延社会。

11月4日、バンコクで開催された「ミス・ユニバース2025」大会で、タイ側での主催者であるナワット氏が、ミス・ユニバース・メキシコ2025代表のファティマ・ボッシュ氏を全出場者の前で激しく叱責し、警備員を呼び出し、会場のドアを閉めるよう命じ、立ち上がったり退席した他国代表たちに対しても失格をちらつかせて脅迫したという事件が発生しました。

大ボス登場!ラウール会長「ナワットはやめろ!」「ミスユニバースはミスグランドとは違う!」

この一件は、タイの人々が子どもの頃から慣れ親しんできた「上からの強権的で粗暴な権力行使」いわゆるパワハラ社会の典型であるとタイメディアは指摘しています。(本誌でも同様の指摘をすでにお伝えしました。上記過去記事)

このような権威主義的な力の使い方は、軍事独裁や選挙政治の領域に限られたものではない。
それは家庭、学校、教育機関、職場、軍隊、さらには不敬罪の存在とその運用など、タイ社会のあらゆる場面に浸透しています。

民主主義と平等の文化を育てることは、現代のタイ社会にとって非常に大きな課題となっています。

それにはまず、社会的に「下位」として見なされた人々──権力、地位、教育、階級などにおいて──との関係のあり方を見直すことから始めなければなりません。

なぜなら、人々が理性や尊重、共感ではなく、力と威圧を当然のものとして行使する習慣を持ち続ける限り、真の平等や民主主義、はたまた思いやりのある社会の実現は困難だからです。

ナワット氏が見せた「生々しい権力行使」の映像は、彼自身の評判を損なうだけでなく、タイという国のイメージにも影響を与えた。

しかし、この出来事を前向きに捉えるなら、これは「人間の平等や多様な意見、民主主義を尊重する文化への転換がいまだ達成されていない」ことを示す代表的な例として警鐘を鳴らしたとも言えます。

一滴の涙も出さずに「涙の謝罪会見」を行ったナワット氏

 

タイ社会に深く根付いた上意下達のヒエラルキー型の権力構造は、依然として強く残っており、それは強制的で対話を欠いた権威主義の特徴になっています。

また、世界で最も厳しい部類に入る不敬罪(王室への侮辱や中傷に重罰を科す法律)は、この巨大な「氷山の一角」にすぎないとタイメディアは語ります。

このような「根深い権力の構造」が政治の領域を超えて社会全体に広がっていることが、今回のミス・ユニバースの舞台という世界中の注目を集める場で、皮肉にも白日の下にさらされたわけです。

ナワット氏は、これまでも自身が主催する「ミス グランド」で度々、同様に権力を行使する姿を見せてきました。
それが垣間見れたので、本誌ではここ数年「ミスコンに興味が失せた」という表現を使って参りました。
今回のような事件(ミスユニバース)が起きることは、我々からすると自明之理だったと言わざるを得ません。

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