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タイの「人的資本」危機! 教育の質低下で5年後にベトナムに後れを取るとリポート。
- 2025/8/7
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本誌では、こういう問題が必ず浮上してくると大分早くから警鐘を鳴らしていました。
タイの教育専門家、ソムポン氏は、タイ国家経済社会開発評議会(NESDC)がユニセフおよびTDRI(タイ開発研究所)と共同で作成した報告書「タイにおける人的資本の開発:ギャップ、障害、および政策的選択肢の分析」に基づき、タイの人的資本の現状について深刻な懸念を示しました。
報告書によりますと、タイの人的資源はあらゆる側面で質が低く、特に幼少期から18歳までの育成段階において顕著な課題があるといいます。
報告では、0歳から18歳までの生産性はOECD諸国平均が85%であるのに対し、タイはわずか61%にとどまっており、教育・訓練が実際の労働市場のニーズに応えられていないことが指摘されています。
このまま対策が取られなければ、今後5年以内にベトナムにも人的資本で後れを取るだろうという厳しい予測も示されました。
幼児教育から義務教育(中学校卒業程度)までは就学率が90〜98%と高い水準にありますが、質の面では深刻な問題が明らかになっています。
幼児期(0〜5歳)には栄養不良や成長の遅れが見られ、例えば低身長が12.86%、痩せすぎが6.18%、都市部では肥満児が9.25%という状況です。
義務教育段階では、小学2年生の時点で42%の児童しか基準に達する読み書きや計算スキルを持たず、68%が水準未満にあるという事実も明かされました。
さらに中学3年生の時点でも、9%〜15%の生徒はまだ小学2年レベルのスキルしか習得できていないという報告もあります。
また、タイでは小規模校が全体の54%を占め、これらの学校に通う180万人の児童の学力が平均して非常に低いことが示されており、子どもたちの自己肯定感の欠如も問題とされています。
さらに高校(M.4〜M.6)への進学率は59.4%と低く、OECDの平均86%と比較しても大きく後れを取っています。
とくに貧困層では教育の途中離脱率が62%にも達し、裕福な家庭の子どもの離脱率16%と比べて格差が明らかです。
教育と職業の不一致も大きな課題で、卒業後の職種が専攻と一致していない割合は56%にも及び、OECDの平均32%を大きく上回っています。
報告書は、タイの若者のスキル不足に深刻な警鐘を鳴らしています。
読み書き能力は64.7%が基準未満、デジタルスキルは74.1%が基準に満たず、感情的・社会的スキルも30.3%が水準未満という結果が出ました。
また、ニート(教育・雇用・訓練のいずれにも属さない若者)の割合が15〜24歳で年々増加しているという状況も憂慮すべきものです。
ソムポン氏は、教育の「エンジン」がうまく機能しておらず、時代遅れであり、子どもや家庭、コミュニティ、そして労働市場のニーズにまったく対応していないと指摘。
教育省に対して、報告書の内容を真摯に受け止めるよう求めました。
解決には、社会的に脆弱なグループへの支援を強化し、教育・保健・雇用・家庭・コミュニティの全体を視野に入れた社会保障の再設計が必要とされています。
加えて、職業訓練制度を体系的に見直し、労働市場と学習者の関心に合った内容に再構築することも求められています。
さらに、教育課程の柔軟化、能力重視のカリキュラムへの転換、そして心理社会的支援の充実が不可欠であるとされ、このまま何も手を打たなければ、タイの子どもたちは将来どの国とも競争できないと強い危機感を表明しました。
タイ貢献党政権の、とにかく金・金・金の「拝金主義政策」が、教育というタイの未来を作る根幹を軽視した結果とも言えます。
早くしないと…、いや、もう手遅れかもしれません。