タイが観光大国の座から転落した日。中国人客は何故タイから離れたのか? マレーシアの成功から読み解く。

タイの重要産業である観光業が大きな揺らぎを見せています。
その主たる要因は、中国人観光客数の激減です。

かつて観光市場の中核を担っていた中国人観光客ですが、2019年のパンデミック前と比べて34%以上の減少を記録しています。

2025年1月1日から7月5日までの統計によりますと、タイを訪れた外国人観光客は延べ1,680万人。これは前年同期比で約5%減となっています。

特に中国市場はこれまで莫大な収益をもたらしてきましたが、現在はタイ観光の「弱点」となっています。

中国人観光客の減少と他国の成長

長距離市場であるインド、日本、アメリカなどの訪問者は増加傾向にあり、1人当たりの平均支出は81,482バーツと高水準となっています。
しかし、人数自体が少なく、中国市場の落ち込みを補うには至っていません。

2019年:中国人観光客 1,110万人(全体の約28%)
2025年(予測):500万人未満(1〜5月時点で232万人)

このような状況はタイの観光収入に直接的な影響を及ぼしており、東南アジアでのリーダー的地位もマレーシアに奪われつつあります。

マレーシアの成功要因

マレーシアは中国人観光客に対して2026年末までのビザ免除措置を導入し、主要都市からの直行便も拡充しています。

その結果、2025年第1四半期に中国人観光客を112万人受け入れ(前年比22%増)という成果を上げました。

一方、タイは同時期に132万人を受け入れたものの、前年比で32.71%の減少という深刻な数字となっています。
これにより、わずか5年足らずで地域リーダーの座が交代しました。

中国人観光客の「タイ離れ」の背景

タイから中国人観光客が遠ざかっている主な理由は「治安への不安」だとタイメディアは結論づけています。

・バンコク中心部でのショッピングモール銃乱射事件
・中国人旅行者の誘拐事件

これらが中国のSNSで大きな話題となり、タイ旅行への懸念が広がっています。

対照的に、マレーシア「安心・便利」なイメージづくりに成功しています。

・中国語を話せるホテルスタッフ
・中国語表記の案内や観光情報
・安全でフレンドリーな都市環境

などが、中国人旅行者の支持を集める要因となっていると言います。

タイ観光の岐路と競争激化

イギリス、アメリカ、オーストラリアなど長距離市場は拡大していますが、全体の28%程度にとどまっており、中国市場の穴を埋めるには力不足です。

・中国人観光客の平均支出:42,428バーツ(平均滞在7.36日)
・マレーシア人観光客の平均支出:21,450バーツ(滞在4.17日)

さらに、ベトナムも競争相手として浮上しており、通貨安(ベトナム・ドン)と物価の安さを武器に、より「手頃」な選択肢として台頭してきています。

タイ政府の見解と今後の課題

タイ観光庁(TAT)は、中国市場の信頼回復が急務であると強調しています。

新しい市場開拓は歓迎しつつも、中国市場の再生なしには、観光収入3兆バーツの目標(2026年)達成は困難としています。

この変化は、単なる統計ではなく、ASEAN全体の観光勢力図の転換点を意味します。

「適応の早い国が優位に立つ」という競争の中で、タイが迅速な戦略転換を行わなければ、今後さらに遅れをとる可能性があります。

まだこんなこと言っているんですね。
これでは、中国人のみならず、他の国からも観光業が見放される日が来るかもしれません。
そもそもタイはマレーシアに先んじてビザ緩和措置をしていますし、それによって犯罪者が流入し安全が脅かされたため、現在のノンビザ60日から30日に滞在許可を短縮するよう各業界から陳情が出ているにもかかわらず、何一つ手を下していない状況です。
全くもって状況分析ができていないことが、もっともの原因かもしれません。

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