カンボジアの「詐欺拠点」は現代の奴隷制度の象徴。なぜ政府は閉鎖できないのか?

6月26日、ロイター通信によりますと、アムネスティ・インターナショナルが報告書を発表し、カンボジア政府が詐欺組織の拠点「スキャマーセンター」での人身売買・拷問・強制労働を黙認していると強く非難しました。

※スキャマー…詐欺

【報告の概要】

この報告書は、18か月間にわたり50か所以上のスキャマー拠点を調査し、8か国58人の生存者の証言を含む全240ページに及ぶ詳細な調査結果となっています。

アムネスティは、中国系犯罪組織とカンボジア警察の癒着や共謀の可能性を示唆しており、スキャマー拠点が人権侵害の温床であることを強調しています。

【生存者の証言:18歳のリサさん(仮名)】

タイでアルバイトを探していたリサさんは、高報酬と快適な職場環境を謳うブローカーの言葉に騙され、夜中に不法にカンボジアに渡航したと言います。
その後、武装した警備員に11か月以上拘束され、詐欺作業を強制されました。

逃走を試みたところ、金属棒で激しく暴行されるなど、拷問にも等しい扱いを受けたと証言しています。

「叫び声を上げ続けたら、静かになるまで殴り続けると言われました。」(リサさん)

【政府の「対応」と実態】

カンボジア政府は「人身売買対策委員会(NCCT)」など複数の省庁横断チームで対応していると主張していますが、報告書に記載された53拠点のうち3分の2は今も稼働中だといいます。

有名なボトゥムサコー郡の施設では、警察が何度も介入したにもかかわらず拠点の活動は止まっていません。

一方、政府はジャーナリストや人権活動家の取り締まりを強化し、2023年には報道機関「Voice of Democracy」を閉鎖するなど、問題の告発者への弾圧が進行中です。

「カンボジア政府はこの人権侵害を止めることができるのだが、選ぶことはなかった。警察の介入は“ポーズ”にすぎない。」by モンセ・フェレール(アムネスティ地域調査ディレクター)

【被害者の広がり】

被害者の対象国は、中国、タイ、マレーシア、バングラデシュ、ベトナム、インドネシア、台湾、エチオピア出身。
また、インド、ケニア、ネパール、フィリピンなど多くの国籍の被害者記録も存在しています。

【アムネスティの提言】

・カンボジア政府は人身売買による労働搾取を即時停止すべき
・全スキャマー拠点の閉鎖と、被害者の保護・補償を実施すべき
・政府の怠慢が“現代の奴隷制”を拡大させていると警告

 

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