タイのキングパワーが崩壊寸前? わずか5年で転落した「免税王」の真実。汚職とスキャンダル。

タイの空港に君臨する免税エリア。
その光景は、ある企業の栄光と凋落の物語を物語っています。

30年にわたり、King Power(キングパワー)はタイの免税事業をほぼ独占し、数千億バーツの利益を上げてきました。
汚職疑惑にも耐え続け、他社なら潰れてしまうようなスキャンダルすら乗り越えてきた同社が、今や崩壊寸前に立たされているといいます。

かつての「無敵企業」、現在は契約見直しを懇願

バンコクの取締役会室では、タイの航空産業の構造を揺るがす危機に幹部たちが対応に追われています。

King Powerは現在、4つの主要空港(スワンナプーム、チェンマイ、ハートヤイ、プーケット)における契約に対し、不可抗力条項(フォース・マジュール)を正式に発動し、契約内容の見直しを強く求めている状況です。

急落する財務状況

・負債の急増
・自己資本比率の危険水準(2023年時点)

国営企業であるタイ空港公社(AOT)にとっては死活問題。

King Powerからの固定収益はAOTの重要な収入源であり、契約見直しにより200億バーツ超の損失リスクも浮上しています。

観光業の縮小、中国人観光客の減少

2025年の見通しでは、タイの観光産業は大幅な縮小が予想されており、King Powerの主力顧客である中国人観光客の減少が顕著となっています。

原因としては、中国国内旅行の増加、タイの安全性に対する懸念、市場構造の変化だとタイメディアはみています。

これらがKing Powerのビジネスモデルに打撃を与えていると考えられています。

腐敗疑惑の根深い構造

危機の根本には、政治的な優遇措置・制度の抜け穴・規制逃れといった構造的な問題があると専門家は指摘します。

過去の論争、スワンナプーム空港の独占

King Powerがその影響力を築いたのは、2005年にスワンナプーム空港が開業した時からだと言われています。

当初より「複数空港の免税権を1社が独占するのは不当だ」との批判が相次ぎました。

PPP法(官民連携法)違反の疑い

2007年:AOT取締役会が特別委員会を設置し、「King Powerの事業は本来PPP法に基づくべき」と指摘しました。
それまで「事業規模は10億バーツ以下」とされていたが、評価が不正確であることが発覚します。
しかしその直後、AOTが突然方針を転換し「PPP法の適用外」と判断しました。

この不可解な逆転劇と同時期に、King PowerはAOTに対する480億バーツの訴訟を取り下げていたという事実もあり、業界内では「裏取引があったのでは?」との疑念が広がりました。

汚職摘発の行方と「うやむや」な結末

その後、国家汚職防止委員会(NACC)は、PPP法を回避するための共謀があったのではないかと捜査を開始しました。

しかし2011年、NACCは5対4という僅差で「不正の証拠なし」として不起訴として処理ました。

この決定は、今でもタイ政界に波紋を呼んでいます。

 

関連記事

最新記事

月間人気記事TOP10

ページ上部へ戻る