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バンコクの都心に囲まれた静かな聖域。どうなる、近代化の波に抗う「チャオメー・タプティム廟」
- 2025/5/18
- もっと知りタイランド

バンコクの活気あふれるサパンルアン地区(サムヤーン近く)に、ひっそりと佇む聖なる場所があります。
「チャオメー・タプティム廟(通称:アーマー廟)」。
ここはただの礼拝所ではなく、150年以上の歴史を持つ文化と信仰の象徴であり、都市の再開発という逆風に立ち向かうコミュニティの希望でもあります。
この廟は、中国系タイ人コミュニティにとって長年の精神的支えであり、海の女神「媽祖(マーズー)」を祀る場所として、安全・平穏・繁栄のご加護を求めて多くの信者が訪れます。
第二次世界大戦中には避難場所として地域を支えたこの場所は、今でも人々が集い、伝統が受け継がれる「地域の“心」としての役割を担っています。
存続の危機に立たされる「祈りの場」、開発計画と移転案に抗議の声
この廟のもう一つの特徴は、その土地がタイの名門チュラロンコン大学の所有地であることです。
長年共存してきた大学と廟ですが、近年の都市開発計画により緊張が高まっています。
大学側は、「センテナリーパーク付近に移転することで保存が可能になる」と主張し、移転を提案しています。
しかし、この案に対して地元の管理者や文化保護活動家たちは強く反対しています。
彼らは「新しい場所では歴史的文脈や精神的な空気が失われてしまう」と訴えており、移転は単なる「住所の変更」ではなく、深く根付いた文化的記憶の抹消に他ならないと指摘しています。
映画化された廟の闘い『The Last Breath of Sam Yan』
この問題は、2023年のタイ映画『The Last Breath of Sam Yan』でも取り上げられ、都市開発による排除と、地域アイデンティティ、文化遺産の強さを描いた作品として全国的な注目を集めました。
映画は、廟を守る運動の広がりに貢献しました。
今こそ、訪れて感じる価値がある場所
チャオメー・タプティム廟は、毎日8:00〜19:00に一般公開されており、MRTサムヤーン駅(出口2)から徒歩圏内、またはBTSナショナルスタジアム駅からバイクタクシーで短時間で行けます。
その小さな境内には、周囲の高層ビルとは対照的な、静かな威厳と歴史の重みが漂っています。
急速に変わりゆくバンコクにあって、この廟は単なる宗教施設ではなく、地域の絆、信仰、そして記憶の力を象徴するかけがえのない存在です。
お参りを目的に訪れても、歴史を学ぶつもりで訪れても、「守るべき価値がある」と気づかせてくれる場所。それがチャオメー・タプティム廟なのです。
タイは古きを良きとする勢が障害となり、いつまでも成長できないという問題が常につきまといます。
超高齢化社会に突入しており、それは「老害」と言う名で襲ってくることでしょう。
今こそ、タイの人々は全てから解放され、成長すべき時なのかもしれません。