バンコクとJICAが協力。日本が、交通、環境、洪水対策で持続可能な未来都市をデザインする。

バンコク都知事のチャッチャート氏は、タイ日本国際協力機構(JICA)の新代表に就任した作道俊介氏を迎え、退任する鈴木和也氏の帰国を見送りました。
この会談では、バンコク都(BMA)とJICAの継続的な協力関係について進捗が話し合われました。

JICA×バンコク:環境と都市機能を強化する5つの主要プロジェクト

1. バンコク気候行動計画(2021-2030)の実施

このマスタープランは、都市の持続可能性を高めるために5つの重点分野を掲げています。

  • 環境に優しい交通システムの推進
  • エネルギーの効率的な利用と再生可能エネルギーの導入
  • 廃棄物管理と排水処理の強化
  • 都市緑化と計画的な開発
  • 気候変動への適応戦略

BMAは2030年までに温室効果ガス排出量を19%削減することを目指しており、JICAはアジア開発銀行(ADB)、国際金融公社(IFC)、日本の環境省、横浜市などのパートナーとBMAをつなぐ重要な役割を果たしています。

2. PM2.5削減プロジェクトによる大気汚染対策

バンコクはJICAの主導するPM2.5削減プロジェクトの2年目(2023-2024)を迎えています。主な取り組みは以下の通りです。

  • 大気汚染源の分析
  • バーチャル大気予測モデルの試験運用
  • 汚染対策の提案
  • 施策の効果検証
  • 市職員向けの専門トレーニング

このプロジェクトはBMA、汚染管理局、タイ天然資源・環境省との協力のもと進められています。

3. スマート交通システムの導入

JICAとBMA交通運輸局は、タイ警察と協力して「エリア交通制御(ATC)」システムを導入しました。

2023年9月にパホンヨーティン通り、ラマ6世通り、ラチャウィティ通り、プラディパット通りなど主要道路で試験運用を行い、ピーク時の車両待機列を20-30%削減することに成功しました。今後は、リアルタイムで交通状況に適応する信号システムを導入し、市内の交通流を最適化する計画です。

4. 洪水対策とADAP-Tプロジェクト

JICAの「気候変動適応に関する共創戦略推進プロジェクト(ADAP-T)」では、都市洪水の経済的影響、特に交通機関への影響を分析しています。調査では、豪雨による長時間の浸水が交通渋滞を悪化させることが確認されました。

JICAは、洪水リスク軽減のための総合戦略を提案し、リアルタイムデータと高度な政策計画を組み合わせた解決策を提示しています。

期待される成果:

  • 洪水リスクエリアの評価
  • 地域ごとの適切な対策の導入
  • 洪水が交通や大気汚染に与える影響の分析

5. スクンビット・モデル – 持続可能な都市モビリティの再構築

2024年5月23日、JICAは「スクンビット・モデル」に関する詳細な調査報告を発表しました。スクンビット地区はバンコクの文化・商業の中心である一方、深刻な交通渋滞にも直面しています。

調査では以下の改善策が提案されました。

  • 交通ネットワークと周辺地域の接続強化
  • シェアモビリティの推奨(カーシェア・ライドシェア)
  • 柔軟な交通手段の選択肢拡充
  • 歩行者優先のインフラ整備

また、都市デザインの新しい概念も紹介されました。

  • 多中心型都市の形成 – 複数の都市拠点を相互接続
  • すべての人のための道路 – 歩行者、自転車、車両の共存
  • ラストマイルアクセスの向上 – 交通機関とのスムーズな接続

これらの戦略により、スクンビット地区を中心としたバンコク全体の都市交通を革新し、より住みやすい都市を目指します。

JICAとバンコク – 持続可能な未来への共同歩み

JICAとのパートナーシップにより、バンコクは大気汚染の削減、スマート交通の推進、洪水対策の強化など、都市の未来を大きく変える取り組みを進めています。

これらのプロジェクトが実を結ぶことで、バンコクは持続可能で革新的な都市モデルとして発展し、環境と都市機能のバランスを取った未来都市へと変貌を目指して行きます。

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